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 南緯45度のクィーンズタウンとは言え、やはり南十字星は北中はせず、
ほぼ天頂近くまで昇ります。このとき左側(東側)にα、βCenの2つの
0等星、右側にηカリーナ大星雲を従えて、見事な姿を見せてくれます。

 ηカリーナとは星の名前です。ギリシア語のアルファベットで、αから
6番目がη。エータ、もしくはイータと呼びます。カリーナとは、以前に
トヨタの乗用車に名前が付けられていましたが、りゅうこつ座のことです。
りゅうこつ座のα星が、全天ナンバー2の輝星、カノープスです。

 ところが1840年ごろ、この星は突如として、このカノープスをしのぐほど
明るく輝いたそうです。1840年と言えば、NZではマオリ族とイギリス国家
との間で、ワイタンギ条約が結ばれ、これはマオリ族も、イギリス本国の
イギリス人と等しい権利を有する、と言うような条約でした。

 条約締結はちょうどいま頃の、2月6日のことだったので、かなり高い空に
見えていたはずです。恐らくイギリス人たちも頭上高く輝くこの星が、何で
急激にこんなに明るくなったか、想像もできなかったでしょうが、もっと
素朴なマオリ人たちに、『ホレ、あんたらの神様のティキ・マウイも、祝福
してくれているよ!』とでも言ったに違いありません。

 このηカリーナ星は、恐らく宇宙でもっともでっかい星の一つで、太陽の
120倍もの質量があり、まだ生まれて数十万年しかたっていない、若い星です。
ところがその巨大な質量のため、猛烈な勢いで水素の核融合反応が進み、
つまり急激に年老いているのです。おそらくあと100万年もしないうちに、
その生涯を終えるでしょう。
 
 この写真は、ηカリーナ星雲の細部を描写するために、短時間露出で撮影
しました。カメラはEOS Kiss Dのローパスフィルターを除去したものです。